2.サイレントだが、割れる酒瓶・波打つ岩場・空き缶蹴りといった音を意識させるショットに溢れている。
蓄音機からの音楽に合わせて乱痴気騒ぎをしている部屋と、別室での静かな乱闘のカットバックも効果的に決まっている。
若い二人の乗る列車の揺れはゆるやかなリズムを感じさせ、波間に被さる字幕の音感は、昂ぶる情緒を一段とかきたてる。
それから、前半に登場する橋や、照菊(水久保澄子)の故郷である港町の坂の情景がそれぞれ素晴らしい。
絶妙の高低感を醸すカメラアングルで捉えられた段々の斜面。
その坂道の途中ですれ違う人々(ヨーヨーに夢中になる大人、ままごと遊びに興じる子供たち、子守りに勤しむ娘、花嫁など等)の点描も風俗描写に留まることなく画面を豊かに彩る。
そして要であるヒロインの健気な魅力。
橋の場面で見せる水久保澄子の振り向きと真っ直ぐな眼差しがひたすら美しい。
いつか『チョコレートガール』を見れることを祈る。