5.《ネタバレ》 映画は人間の欲求や快楽を満たすためだけではなくて、何かを感じて考えさせなければいけないと思うのです。監督自身も単なるホラー映画にはしたくない…そして観る人間に考えてほしいと言っていたように、観返すたびに考えさせられ、今まであまり気にしていなかったシーンやセリフに意味があったり新しい発見があります。
信仰を失いかけているカラス神父は、信仰に馴染みのない私たち日本人でもその苦しみはわかるはずです。誰だって大切に思っていた事柄が信じられなくなったり、大切な人がもし死んでしまったら…考えるだけでも恐ろしいですよね。悪魔に取り憑かれたリーガンの首が一回転したり階段を信じられない恰好で血を吐きながら降りてきたり、悪魔の顏が暗闇のなかで一瞬映ったり、そういったシーンも恐ろしいですが、母親のそばに居ることができなかったカラス神父や、娘を助けたくても助けることができないクリスの心情を考えるとこれらのほうがとても恐ろしく思える。そこにこの映画が単なるホラー映画ではないと言われる理由があるのだと思う。リーガンの部屋の窓から淡い光が射し、街灯の下にメリン神父が立つ善と悪が対峙するシーンや、悪魔の居る空間では吐く息が白くなる緊迫感。とてつもなく力強い信念のようなものをこの映画から感じました。