1.《ネタバレ》 何を書いてもこの映画で受けた衝撃をうまく言葉で表せず、現在三回目のレビュー書き直しです。筆舌に尽くしがたいとはまさにこういう心境なのでしょうか。衝撃的な内容だったことは事実です。
退役軍人のハンク(=トミー・リー・ジョーンズさん)が息子の無許可離隊の通報を受け現地に探しに行くと息子は遺体で見つかり、その背景を突き詰めていくとイラクへの派兵が彼らの精神状態にとてつもなく大きい爪痕を残しているのがわかってくる・・・といったストーリー。
この映画にはイラクが具体的にどのような状態だったかはほとんど描かれていません。そもそも映画ですし、作中にあった映像などを100%真に受けるというのはナンセンスです。しかし、イラクの”本当の”状況やそれによって影響を受けた兵士達に思いを巡らすには充分な内容でした。個人的な意見ですが、戦場のせの字も知らない自分のような日本人は、彼らが逃避のためにドラッグをやってても責めることすら出来ない、そんな気持ちになりました。
特に象徴的だったのがマイクを殺したペニングの供述シーン。殺した相手の父親が目の前にいるにも関わらず淡々と自分の犯行を述べたり、マイクのイラクでの異常行動を父親に聞かせたり、挙げ句「マイクを埋めようとしたが、腹が減ったからみんなでチキンを食べにいったんだ。」
まさに”異常”です。
しかしそれがただの”異常”ではなく、必ずしも彼ら兵士だけが背負うべきではないとても特殊な”異常”ということも同時にわかります。供述シーンで父親は息子のことを蔑むように語るペニングに飛び掛かると思っていました。彼をそうさせなかったのは上のような理由と、さらにそんな軍や兵士、ひいては国の状況に絶望し、もはや彼のことなど見えていなかったのかもしれません。、
逆さの国旗は救難信号。「もうどうにもならない」「誰か助けてくれ」そういう意味があるんだと主張したハンク。再び逆さになった国旗が、息子の事件を通じて自分の国の現状を知ったハンクの気持ちを象徴しています。
いつかあの掲揚台からガムテープが解かれ、国旗がまっすぐになる日が来るのでしょうか。。。