1.《ネタバレ》 「暗殺者」を描いた映画はゴマンとあるだろう。プロフェッショナルで孤独、故に心の拠り所や安息、愛を見つけるとそこへ向けて歩き出す。「レオン」然り。しかしあんなものと比べられない程に成熟したワインの如き良い雰囲気がこの映画にはある。暗殺者ジャックを演じたジョージ・クルーニーが醸し出す悲哀と緊張感、愛する女を見つけ、得た時にそれらから解放された表情には説得力があります。そして写真家として成功を収めていた監督が切り取るイタリアの田舎の風景が情緒豊かで美しい。派手な演出は一切無く、暗殺者ジャックの仕事ぶりと心の内を描いている。中でもカスタム銃を製作する工程はビジュアル的にもマニアックであり、興味を惹かれる。そしてジャックの几帳面で潔癖な性格まで分かる。同業者マチルダにオープンカフェでカスタム銃の依頼を受けた時のプロ同士の銃に関する会話、その後の試射の緊張感と言ったら凄まじい。ジャックの銃を構える早さにドキッ、とさせられた。こういうシーンの方が退屈するどころか、派手な銃撃や心理戦なんかよりもずっと見応えがあり魅了されるのは、その目的(カスタム銃依頼・製作)をきっちり伝え、無駄無く演出しているからだと思います。ジャックが心の拠り所と安定を求めたのはOPで一緒にいた女性、カスタム銃を依頼した同業者のマチルダ、そして娼婦のクララ。もう一つの見所である女性と一緒にいるシーンです。常に自分の背後を気にしながら生きてきたジャックが手にした得難い本当の愛。分かっていても罪を犯した者には得難い夢だったのか。