1.エンドロールまでしっかり観終わった後、ラストのライブシーンを繰り返して、主人公の女子高生が大きく息をついてからガッツポーズを決めるカットを二度観た。
その後も特典映像の劇場版予告編を見終わったまま、DVDをプレイヤーから取り出せないでいる。
まさに余韻に浸っている状態だ。沢山の映画を観ていると稀にこういう状態に陥る。
実在のバンド「神聖かまってちゃん」のライブまでの日々を軸にし、まったく関わりのない別々の環境の人間たちのくすぶる心情と葛藤がつらつらと描かれる。
作り手が自らの趣味趣向を全面に押し出したマスターベーション的な映画世界が繰り広げられるんじゃないかという危惧は大いにあった。
そもそも、某ラジオ番組で話題に出ていなければ、こんなタイトルの映画は見向きもしなかったろう。
“見向きもしなかった”ことを考えると、本当にぞっとする。
冒頭から安っぽいデジタル撮影の映像が映し出され、上手いのか下手なのか、はたまた自然体なのか素人くさいのか判断に悩む出演者らの演技が繰り広げられる。
作り手の自己満足が入り交じったチープな映画世界が展開しているようにも見える。
しかし、すべてが終わった後には、無駄なものが何もない映画に思えるから不思議でならない。
“チープ”という印象がいつの間にか消え去り、“良い映画”という印象も覚えぬまま、気がつけば“大好きな映画”になっていた。
「神聖かまってちゃん」なんてふざけた名前のバンドはその存在すら聞いたこともなかったし、必然的に作品の中で流れてくる彼らの音楽にすんなりと共鳴できたわけでもなかった。
しかし、ラストのライブシーンでは彼らの音楽とともに、登場する様々な環境の人物たちの様々な思いが混じり合うようにして流れ込んでくるのを感じた。
プロ棋士を目指す少女は将棋盤を睨みつけ汗を拭う。
くすぶっていたそれぞれの火種が、バンドの音楽とともに突如として燃え上がる。
彼らの問題がそれですべて解決したわけでは決してないけれど、そこには次に進むための一筋の光が見える。
「感動は理屈ではない」なんてよく言うけれど、本当に自分の中で理屈が成立する前に訳が分からぬまま気持ちが高揚し、涙が溢れ出そうになってきた。
まだまだ吐き出したい思いは溜まっているけれど、うまく言葉にできない。
年の瀬、想定に反してスゲー映画を観てしまった。