2.《ネタバレ》 雨のおかげで扇風機もいらぬ程、めっきり涼しくなった日曜日の午後に鑑賞。最近になって市川作品にはまったおかげで、タイトルの語感は好きだったもののアイドル映画と思い込んでいた本作を手に取ることとなった。敬遠していた自分が悔しくなるほど言葉では語り尽くせない切なく美しい画が続いてゆく。話の流れはゆったりとし、登場人物も台詞の数もとても少ないのだけれど、ちょっとした仕草や表情、背景で言葉より饒舌に表現してゆく。深い青に包まれながら握り合う手。駅に向かう陸橋。一度だけある階段でのキスシーン。徐々に変わる気持ちの移ろいまでも映像で見せる。その映像表現ゆえ、不器用で真面目すぎる二人ゆえに最後で別れを拒むエリコと鼈甲飴を握り締め一人咽ぶ田村の気持ちの解放が際立つ。ただ少し気になったのは、バスの中での偶然すぎる出会い。話の展開自体はいいのだけれど、他にも表現方法があったのではないだろうか。でもそれも些細なこと。名作には違いない。