2.音楽もなく、インタビューもほとんど編集されておらず(監督の質問を通訳が訳し、質問された人が考えながら途切れ途切れに答える、それをまた通訳が監督の為に訳す、というやりとりが撮影されたそのままのスピードで映し出されています)、シンプルなつくりのインタビューが8時間以上、淡々と続きます。インタビューを受ける人たちの言葉、仕草からは極度に抑えられた感情しか読み取れません。しかし、そのことがかえって、彼等がどのような極限状態を体験してきたのか、その後の人生でその体験と如何に対峙してきたのかを雄弁に物語っています。クライマックスと呼べるような、見ている人を泣かせようとしている場所がありませんでした。映画を見て登場人物に同情(感情移入)して涙を流せば、観客はそれで一種の安心感を抱くのかもしれません。話が完結して気持ちの整理がつくような気がするから。同情して涙することを許さないこの作品は、見る人に対してとても厳しい作品です。カタルシスが得られない分だけ余計にずしんと重たいものが残ります。学生時代にオールナイト上映をしていたときには門限のために見れなくて悔しい思いをしましたが(今から考えるとばかばかしい話です)、NHKで放映されていたんですね。私は私立図書館から借りたビデオで見ました。今度ポーランドに行く際には、(トレブリンカは交通の便が悪いので残念ながら行けませんが)アウシュビッツとビルケナウに行く予定です。