2.これは神話。といっても神が死ぬ前の神話。ギリシャ神話のような「とっても人間的な神」じゃなくて、「まったく人間的な要素がない」=「神が生きている」神話。映画は、エロス(愛)とタナトス(死)を描きつづけてきたけれど、最近エロスが中心になりすぎてないか? 愛なんてなくてもいいじゃないか、恋なんてしなくてもいいじゃないか! ドラマチックに生きなくてもいいじゃないか! ま、そいうのも確かに大事だとは思うけどさ。でも、そういうのがなくても自分が生きていることには何の変わりもないはず。本来、愛やら恋やらの感情が成立する以前に、世界と自分が「凛」として成立している。そこに生ける神がいる。この映画は、その根源的な状況を想いださせてくれる。すうっと流れるストーリーには、人間くささがなく、ただ清冽な暖かみがある。物語をつむぐのが少女という点も、考えさせられる。僕の心の隅にずっと残っている映画のひとつ。