1.偽ドキュメンタリーという笑わせる手法を取っているものの、その向こう側にひそむ心はとても厳しく、そして優しい。周りと全く同化してしまう行為は、孤立への恐怖や好かれたいという気持ちから周りに合わせて自分自身を見失ってしまうという、社会との関わり方についての普遍的な悩み。それをしめっぽくせず笑いに変えてしまうセンスが素晴らしい。精神科医のミア・ファローのおかげで自分を失わなくなった主人公は、その後多々のトラブルでまた症状が再発する。やはり努力してもダメなのか。そう思ったところで今度は他人と同化してしまう体質のおかげで命が助かり、英雄として迎えられてしまう。彼は言った。「人間おかしくなれば何でもできる」。大事なのは周りに合わせることでもなく、自分の欠点を無理に責めることでもなく、常に自分自身を主張することでもなく、欠点を含めた自分自身を受け入れること。そしてできれば自分を助けてくれる大切な人がそばにいてくれれば、こんな幸せなことはないだろう。笑った後に心がきれいになっている、大傑作。