13.《ネタバレ》 今更ながらレビューしていない事に気が付いた。
【以下、長すぎる前書き】
私が小学校高学年位の時は、詳しい背景は知らないがTVで劇場公開作の宣伝番組を今以上に沢山放送していた様な気がする。
色々なジャンルの作品が取り上げられていたけれど、「あなたの知らない世界」等のワイドショーをおっかなびっくり観ていた私に取って、
ホラー映画(後に「スプラッター・ムービー」)は一番楽しみにしていた番組だった。
その中でも何故か、この『ゾンビ』はエレベーターに乱入してくるゾンビ達のビジュアル含め、私の記憶に強く刻み付けられた。
残念ながら初回公開時に劇場で鑑賞する事は適わなかったが、時は流れて1985年、18歳の私は日芸映画学科に入学した姉の影響も有り、
単なる時間潰しでは無く、意識して映画館に足を運び、レンタルビデオ屋にも足しげく通ういっぱしの映画青年になっていた。
そんな中で開催された第一回東京国際映画祭、中でも目玉企画の一つであった東京国際ファンタスティック映画祭の開催は、
日本に於いてホラー映画が初めて正式に認知された記念すべき出来事で有り、私はなけなしのバイト代でチケットを買い、
連日の様に今はもう無い渋谷パンテオンに通い詰めていた。
この流れで過去のホラー映画にも再び焦点が当たり始め、ゾンビのリバイバル公開と言うこれまた記念すべき出来事に至る。
当時、満席(!)のオールナイト上映で本作を3回連続で観たのも、今となっては良い思い出だ。
【やっと本題】
小学校高学年の時にTVで刷り込まれた印象が強すぎたのか、劇場初見時の印象は実は余り良くない。
もっと派手にゾンビ達を狩るシーンや、人間達が食われている描写のオンパレードかと思いきや、どちらかと言うと冗長な、
悪く言うと眠くなりそうな雰囲気の中で物語は進行していく。
これこそがいわゆる「ロメロ節」の一つなのだが、まだ20歳前の私には理解が出来なかった様だ。
更に時は流れ、ホラー映画が映画のジャンルの一つとして成立し、特殊メイク技術の発達に伴い雨後の筍の如くゾンビ映画が
巷に溢れる様になった今、敢えて本作を見返すと、いまこの年代だからこそ判る表現・描写が多い事に今更ながら唸らされる。
本作を評するのに既に使い古されたフレーズだが、本作はそのまま人間社会の縮図であると言える。
表面的に映像を追いかけるのでは無く、このシーン・この台詞にはどの様な意図が盛り込まれているのか?と考えながら
映画を観る様になったのも、私の場合は他でもないこの「ゾンビ」からなのだ。
家族みんなでワイワイ観る映画では無い、馬鹿笑いしたいなら、CGテンコ盛りの走り回るゾンビが大挙して出てくる作品を観れば良い。
本作は、夜一人で酒でも飲みながらじっくりと観たい。そう思える作品なのだ。
自分自身の映画鑑賞史に於ける本作の大きさ、後世の数多の作品に与えた影響を称え、満点献上します。