1.《ネタバレ》 キムギドク監督ってのはいまだによくわからないなあ。なにか変な魅力があるのは事実だし、どこかに才能はあるような気がするけど。少なくともストーリーテラーではないな。演出の才能もあるのかどうか。「春夏秋冬」でもどっきりするような場面や映像はあるにせよ、なにか紙一枚ずれているような、ツボをはずしているような。もちろん意図的だろうけれど。
本作では、チョ・ジェヒョン演ずるマゾヒステティックやくざの、純な女の子に対するとんでもなく屈折・倒錯した愛情を描いているのだが、到底尋常な人々の支持を得られるものではないだろう。かといって変質者の異常性欲犯罪という切り口でもない。異常なことは異常だが、変に暖かいのも事実だ。マゾ的趣味に関してはだいぶ徹底してもいる。敵方のやくざが大きいガラス板を切り出し、身の丈もあるほどのナイフを作り、腰溜にしてジェヒョンの腹部を突き差し、そのままひねってバリバリとガラスが割れるシーンでは観ている私も呻き声を上げた。女が自分の位置まで堕ちてこなければ愛せないロクデナシ男の気持ちはわからないでもない。ラストのその根性は純粋で無垢な愛の極限かもしれんなぁ。ジェヒョンの目がいい。獰猛な中にうさぎのような無垢を秘めた表情は寒気がするほどだ。この変な魅力はなににも似てない。