1.澤井信一郎が尾行シーンを撮る。わくわくする人は私の友達です。追う者の視線は追われる者に固定され、一方、追われる者はその視線をやりすごし、あるいは知らないまま歩き続ける。■さらに焚き火の煙がくすぶる小さな浜で、ハーモニカを交換し、なんということもなく、ふと心が通じ合っていく瞬間。■あるいは、藤本美貴の住む飲屋街の、夜ではない、昼間の風情。どこを切っても、「映画」。一体、これは何なのだろう?■石川梨花の衣装がいかにも専属スタイリストが用意した、といった非映画的なものであっても、物語の設定が一昔前のアイドルものであっても、澤井は絶対に手を抜かず、なんとか「映画」として成立させようとする。前記した尾行シーンも、もともとの脚本にはなかったものではないだろうか。これぞマキノの直系、プロの仕事。映画とはこれだと思う。