1.「どういう映画?」と訊かれたら、「『狼たちの午後』と『死刑台のエレベーター』を合わせたような映画」と答えることにしている、ケビン・スペイシーの異色サスペンス。つまらないひき逃げ事件を起こしたチンピラ3人組が、たまたま一休みを決め込んだ酒場の客に大物武器密輸人が混じっていたため、いきなり警官隊に包囲され、追い詰められて行く数時間の模様が、密室ならではの異様な緊張感の中で描かれて行く。単なる勘違いが招いた泥沼の包囲劇は、やがて小悪党らしい気の弱さで逃げ腰な展開をして行くのだが、マット・ディロンにゲイリー・シニーズ、ウィリアム・フィチナーといういかにもな顔ぶれといい、人質役のフェイ・ダナウェイ、スキート・ウールリッチなど個性豊かなメンバーで、良く出来た舞台劇を観ているようだ。これが初監督のケビン・スペイシーの知性と才能に驚嘆させられる緻密なプロットと上質な演出。密室劇というスタイルで観客の心をグイグイと引っ張って行く手腕は見事というより他にない。派手さはないが、ガッチリと良く出来た映画、というのが本作の印象である。これは上手い。