2.《ネタバレ》 墓場や酒場が先に建ち、教会や学校が建設中の未完成の町。一般市民と無法者、賭博師や娼婦が微妙なバランスで共存する。西部劇は大概こんな設定なので、映画としては分かりやすく、娯楽性の高いジャンルですが、この映画はその大筋を崩さずに、芸術の域に達した稀有な作品です。特にいいのは主役のワイアット・アープ役、ヘンリー・フォンダです。ただ、西部劇の王道のヒーロー、ジョン・ウェインと違って渋いです。寡黙であまり感情を出さず、友人になったドクに対しても、打ち解けた感じを見せないものの、ひそかに尊敬し、身体を心配します。町の治安にも銃をあまり使わず、けっして暴君にならない。 そんないぶし銀のような彼が、淑女のクレメンタインに一目惚れして、いきなり可愛くなっちゃいます。いきなり服装を気にして散髪したり、ダンスの申し込みをするのに、ええい言うぞと帽子を投げたり、まるで幼稚園の保母さんに恋した男の子のようです。青空の下のダンスは、足運びがもう最高でした。
もう一人のヒロイン、チワワは一人の男を想いながらも、他の男を受け入れざるをえない弱い女性です。私にはワイアットに毒づく姿が、ドクの言葉とは逆に弱々しく見えました。そして、家族だけの世界で世間から孤立した父親役を演じたウォルター・ブレナンもまたいぶし銀のような名演でした。クライマックスの決闘シーンは、邦題が「静かなる決闘」でも良かったんじゃないかと思うくらい静かです。台詞も少ないし、音楽もない。モノクロなのに青く見える空、決闘の小道具にもなった土煙りが素晴らしい描写です。助太刀に来た3人中2人に身内の問題だからと、銃から弾を抜くところが実直なアープらしいです。 ところで、原題と主題歌にまでなったヒロインの女性がクレジットの4番目というのも、けっこう珍しい映画じゃないでしょうか。まあ、オーマイダーリン、チワワには出来ないでしょうが(笑)。