1.《ネタバレ》 夜のシーンがいい。色のない世界をこれほどリアルに表現した絵やアニメは初めて見たような気がする。日本のアニメとは、やっぱり動きが違う。技術的なことには無知なのですが、妙なところにリアリティを追及して、逆にアニメ的に見えたりして、アニメ的に大胆なデフォルメをしてしまう日本人とは表現に対する感覚が違うのかなあ、とか思ったりしたのだがどうなんだろう。イスラエル版「地獄の黙示録」といったところだが、まさにイスラエル自体の状況が万年ベトナム的。もう何もかもが狂ってます。絵も、戦争も、人間も、音楽も、ファランヘ党も、イスラエルも、監督も。兵士がライフルでエアギター始めて、そのまま戦闘のダイジェストに突入。機関銃乱射しながらワルツを踊る。「戦車の中だと安心だった」。やっぱり戦場というのは感覚が麻痺してしまうのが怖いんですね。敵性国家に包囲されたシオニズム自体が、まさしくそういう状態。イスラエル映画界からこのような作品が生まれたというのは大変意義深いことだと思います。失われた記憶で引っ張っておいて、オチが「僕はそこにいた」だけでは物足りないような気もしますが、基本ドキュメンタリーだから仕方ないのでしょう。最後の実写は記憶を取り戻したという解釈でいいのかな?イスラエルが、あるいは世界が意識的記憶喪失になっているというメタファーのようにも思える。西岸では今も「入植」が続いているわけだが、その事実を知っている人はどのくらいいるのだろうか。