17.《ネタバレ》 大きく分けてこの映画は三幕に分けられると思う。
・第一幕(ゴジラ登場~タバ作戦立案まで)
怪獣映画というよりはシミュレーションムービー、政治劇に近い。
シン・ゴジラが他の怪獣映画と大きく異なる個性を持っているのは、この部分を描き切ったことだと思う。
実際にゴジラという未確認生命体が今の日本に現れたら内閣はどういう手順を踏んでどう対応するのか、
それを過剰なまでの早口台詞と細かいカット割りで見せている。
この豪雨のような情報の連打を心地よいと感じるか、しつこい、ついていけないと感じるかでこの映画の評価は大きく分かれると思う。
ちなみに自分は前者である。
・第二幕(タバ作戦実行~ゴジラ停止まで)
ゴジラに対して人間がいかに無力かをこれでもかと見せつけられる。
ゴジラvs自衛隊のバトルは他のゴジラ映画でも描かれていたことなので第一幕ほどの独創性はないが、
最新鋭の火器に対してここまで相手にならない描写はおそらく初めてで、
その後の首都崩壊シーンと併せて「歴代ゴジラで最強」を嫌というほど感じさせられる。
またこのシーンは火の吹き方やかぶさるBGMと相まって、恍惚感すら感じさせる。
・第三幕(首都機能移転~ラストまで)
徹底的に「リアルさ」を追求した前二幕と異なり、フィクション要素を強めて爽快感を感じさせるつくりになっている。
まずあぶれ者の集まった巨災対のメンバーが序盤の閣僚達と比べていかにも物語の登場人物然としているし、
博士の残した謎の解明方法や無人在来線爆弾等のギミックも「リアルさ」からは逸脱しているので、
前半部分でのめりこんでいた観客のうちにはこの変化で冷めてしまう人もいるかもしれない。
私の場合は、興奮せざるを得ないBGM込みで、力技で捻じ伏せられてしまった。
過去のゴジラ映画と明確に差別化を図りながらも特撮、怪獣映画の良い部分を確実に継承しており、
なによりこれだけ硬派なつくりにもかかわらず、ゴジラに興味のない層を巻き込んで大ヒットしたことは純粋に凄いことだと思う。
結論は第一・二幕が10点、第三幕が8点といったところで、少し甘いと承知しつつも10点献上。