1.《ネタバレ》 原作は連載当時時々拝見。吉田監督の手に合うはずだと確信しておりましたが、想像以上!吉田恵輔節炸裂の、地獄絵巻エンターテイメントを堪能させていただきました。まあ、そのやり口のエグいことエグいこと。修羅場と泥沼のドミノ倒しの中で笑わされる屈辱が堪りません。背徳感?不謹慎感?心が痛いのに気持ち良いから不思議。自分はMだったのかと困惑するばかりです。もうね、お話は基本的に滅茶苦茶なんですよ。暴走と迷走だらけ。でも、行動原理は“幸せになりたい(幸せにしたい)“。誰もが望むこと。何の問題がありましょうか。それが地獄へ続く田舎道という恐ろしさ。どうにもなら無い現実から性欲で逃避。いや、性欲こそが人生。アイリーンの場合は“お金“と言い換えてもいいでしょう。自己嫌悪と自暴自棄で、もうどうにでもなれってか?そりゃどう転んでもハッピーエンドなんて無理ですやん。そこに愛は有るの?なんて問い掛けが、これほど陳腐に感じるドラマがあったでしょうか。勝手に決めろ、自分で考えろと、突き放されているようでヒリヒリします。私が思うに、アイリーンに対して何らかの激情が岩男にあったのは間違いないでしょう。人殺しのハードルはかくも高いです。己を見失って思いの丈を“アレに彫る“とか、端から見たら完全に狂ってます。一番近い言い方が“愛“なのかなあと思います。“執着“よりも濃い感情。幸せだったかどうかは別にしても、岩男に生まれた意味はあったんだと思いたいです。嫁不足、晩婚化、国際結婚、村社会、格差、偏見、人種差別に、おばさんのくるくるパーマ。ディープな社会問題山盛りで、是非の処理能力が追い付きません。心が乱れて、最早正常な判断が無理なんであります。こんな修羅場ショーにあっても、気持ちがどん底まで落ちないのは、吉田監督には人間に対する肯定が根っこの部分にあるからだと考えます。錯覚かもしれませんが。最後に言っておきたいのが、アイリーンちゃん(ナッツ・シトイさん)が素晴らしいってコト。本年度のオレデミー主演女優賞は彼女で決定です。あと木野花さんの怪演にも特大のグランプリを進呈いたします。もちろん安田顕さんも最高でした。河井青葉さんには殊勲賞を、古賀シュウさんには敢闘賞で如何でしょうか。なお、この映画が文化庁の助成を受けていることに軽い衝撃をうけています。日常生活で気軽に『お◯んこ』って言っても大丈夫な気がしてしまうのが重大な副作用。自分が怖くって仕方がないです。年頃の娘がいるんです。この責任どう取ってくれるんですか。