1.《ネタバレ》 『ここは退屈迎えに来て』でほんのちょい役だったにもかかわらず瀧内公美さんが強く印象に残りました。それをprime videoで鑑賞しておそらく瀧内さんつながりで「あなたへのおすすめ」で出てきたのがこの『火口のふたり』。概要を見ると瀧内さんが主演と言うことでさっそく観てみることにしました。
上述のように、別の作品で印象に残っていて「綺麗な人だなー」と思っていた人がここまで体を張った役をやっているとは思っていなくて、もう自分もいい歳ですがちょっといいなと思っている女性のあんなシーンを見てしまったらドキドキしてしまいます。
昔付き合っていたふたりが賢ちゃん(=柄本祐さん)が故郷の秋田へ戻ってきたことをきっかけに、昔の関係に戻っていく物語。流れを見る限りでは、瀧内さん演じる直子は元々そういうつもりで賢ちゃんに接近していたように見えました。賢ちゃんははじめだいぶ自制しようとしていましたが、直子に詰め寄られてキスされてからはもう直子にズブズブ状態に。そんなつもりではなかったはずなのに、ある一線からはもうその女性にのめり込んでしまう心情はすごくよくわかる。すごく純粋で、変な言い方ですが、「真っ当な」人々からしてみれば体の関係で始まり体の関係でつながるこの二人のような恋愛は邪道なのかもしれません。しかし、ふたりが心でつながっているのがわかれば経過はさして問題でもないような気もしてきました。体の言い分ではじまる恋愛も、全然捨てたもんじゃないな、と。そういえば、男はバツイチで女は一応結婚前なので、不貞関係にはならないのかな。
個人的に、瀧内公美さんの声のトーンや話し方、ときおり見せる幼い態度がとてつもなくツボでした。可愛い。あの声で「なに?」とか「うん」とか言われるだけでゾクゾクします。お肉屋に入る前の会話が下ネタなんですが、前の晩痛めた賢ちゃんの下半身に対して、「今日使えそう?」「やった♪」という様子が可愛すぎて。あのくらいの年齢の女性が無邪気に、でも性に対して開放的にはしゃいでいる様子は何とも言えずエロティックでした。
こういう恋愛ができる時間ってすごく貴重で、大事にしないといけないんだなとつくづく思いました。作中の直子が自分と賢ちゃんのいとこ関係を引き合いに出しながらのセリフで、「私たちみたいにいとこで関係を持ってる人や、兄弟や親子でやってる人だってほかにもたくさんいると思う」というのが印象的でした。ドラマや映画の話って作り物で、だから現実と比べればとても奇抜なものだという先入観がありますが、現実に生きている人間一人ひとりのドラマも、この映画に負けないくらい奇抜で驚くようなことはいっぱいあるんだろうなと改めて思いました。
現実は富士山の大噴火ではなく感染病の蔓延に苦しんでいます。比べるわけではないですが、火山灰よりももっと大規模に影響をもたらす感染病がはびこる中、この映画のようにいびつでも前向きになる出来事があれば、と思います。
【追記】
何となく映画のタイプ的に満点をつけるのが憚られるような気がしてはじめは9点を付けていたのですが、もう一度鑑賞して、二人のやりとりや関係が心に刺さって感情移入のようなものが抑えられなくなってしまったので、10点を付けることにしました。主に瀧内さんの演技に対してですが、本当に魅力的で、印象的な演技でした。