3.劇映画を完全にぶっ壊した時代劇。私が求めていた時代劇です。これ、こういうのを観たかった。通常、こういう幕末ものは「薩長同盟」や「徳川幕府」のお偉いさんがぞろぞろ出てきたり、京都の街をデカクとったり、勝海舟が出てきたり・・・とにかく、話が拡大し過ぎてつまらなくなる。しかし、本作は(予算がなかったのか)竜馬を巡る人間に焦点を当てて、ほとばしるエネルギーを余すことなくフィルムに収めている。スケールは微塵もないが、その分、竜馬の半径1mにピッタリくっついた感じの映画だ。
竜馬演じる原田芳雄と、竜馬の相棒である中岡慎太郎(石橋蓮司)、そして、薩摩の刺客(松田優作)の三人が豪快な土佐弁で泥にまみれて本音を語りあい、女遊びをし、「ええじゃないか」が本当に「ええのか」と変装する。その変装姿で竜馬と慎太郎がとっくみ合い、慎太郎が肥溜にどっぷり浸かる。で、ホトボリが冷めたのか二人は女装のまま雑魚寝している。慎太郎が竜馬の身体に寝向きを変え抱きつく。「ギョ!」とする慎太郎。これが濃いモノクロで展開される。痛快だ。この表現は、時代を動かそうと革命の意思熱き者同志が、庶民の姿となって今後の日本の姿を語り合うである。滑稽であり、時代に敏感であり、バイタリティがある。それを今平さんと似ていそうで違う感覚で描写した傑作。