4.原作では、主に“性”にポイントを絞っていた。援交や集団レイプ、自分の父親となる精子ドナーを探し出す、など。しかし一番のエピソードは、兄とのベッドシーンとその兄との間に子供を宿すことだったはず。エッセイのように淡々と物語が展開し、少女の過激な行動が単なる私生活であるとして話は進んで行く。この物語において、父親探しは数あるエピソードの一つとして取り上げられているに過ぎない。☆☆☆では映画版はどうであろうか? オープニングは期待させられる始まり。今やブレイク中の竹内結子がセーラ服に身を包み、彼女の視点で見た東京の裏社会が映し出される。しかし物語が始まってしまうと、かなり原作とはイメージの違うものに仕上がっている。異父兄と旅をし、自分の父親となる“00307”の精子ドナーを探すことがメインに。原作では父親に援助交際の相手として会うシーンもある。集団レイプにあったり、兄の子供を宿したり、と言う社会のモラルや常識から逸脱した世界を描いたことで原作は話題になったはず。しかし映画では全くそう言った話は吹き飛んでいて、ちょっとツッパリ目の普通の女の子が、ただ北陸に普通に旅をするだけの映画になってしまった。☆☆☆観ていて特に気になったのは、安藤政信。不覚にも他の作品では結構良い俳優だと思っていたんだが、本作でははっきり言って大根である。知恵遅れの兄を演じるはずが、全く役に成り切っていない。原作ではベッドの相手としてしか登場しない兄。役作りとしても難しかったと思う。これだけルックスの良いこの人に、この役をやらせるのは無理があったのでは?ヒロインは障害を持つ兄であっても、それをいとおしく思うところに精神的についていけない少女の実態が浮き彫りになるはずなのだが、本作では単なるアイドルものに陥ってしまっている。☆☆☆映画「高校教師」にも言えることだが、原作には北陸でのエピソードなんてどこにも無い。しかし映画では永遠とそこを舞台にした話が綴られている。東京の荒れた姿を映し出すことに意味があるのであって、のどかな田舎町へ舞台を移したらなんの意味もない。援助交際をテーマにし、世相を映すのが目的だったはずなのにロケ費が浮いたのか、全く違った設定に書き替えられてしまった。目前の問題を捨て、北陸に逃げたのは別にヒロインだけではなかったようである・・・