2.《ネタバレ》 以前に動画投稿サイトで見たことがあったのか、オチは知っていた。知っていても特に印象に残っていなかったということは、初見時にも大して評価していなかったのだろう。年を取ると感性が鈍っていちいち驚くのが面倒臭いという面もあるが、こういう一発芸はもうパターン化した気もして正直それほど衝撃的にも思えない。
それでもとりあえず何か書いておくことにすると、まずこれと似たような印象のアニメとしては「ピカドン」(1979)があるが、しかしあっちは7分もあってそれなりの前振りもあり、何より出来事の内容をみな知っているのでこのアニメほどの反則感はない。それより、そういうものを思い出すこと自体がゴジラ=水爆大怪獣と知っている日本人だからこそのことであり、こういうアニメを作って得意になっている北米人はゴジラ=トカゲとしか思っていないのだろうから呑気なものである。
ところで、この小編がわれわれに訴えようとしているのが何かといえば、それは平和を無慈悲に踏みにじる暴力の理不尽さ、ということに違いない。しかしバンビというのはわれわれ人類にとって無条件に守るべきものなのだろうか。ゴジラ=トカゲならバンビ=シカであり、それ自体が人類に益をなすものともいえない。かえって国内では近年、山間部でのシカによる農業被害が深刻になっており、農林水産省によれば野生鳥獣による全国の農作物被害額は平成23年度で226億2703万円に上っているが、そのうち1/3強の82億5990万円がシカによるものである。地域別では北海道だけで60億8549万円の被害が生じているほか、西日本での被害が大きい。このような状況は現地に「営農意欲の減退、耕作放棄地の増加等をもたらし、被害額として数字に現れる以上に農山漁村に深刻な影響」(農水省パンフより引用)を及ぼしている。このままでは、地域によっては人間がシカに駆逐されることさえ危惧されるのであり、それでも北米人があえてバンビに肩入れしようとするなら、われわれはゴジラを支持すべきと考える。国は平成24年度補正予算で「鳥獣被害防止緊急捕獲等対策」として129億3800万円もの事業費を計上し、捕獲活動の強化等による集中的な被害対策を実施しようとしているが、むしろここはゴジラに山間部のシカ退治を任せることを考えてもいいのではないか。
以上で字数は制限ぎりぎりで、音読すれば2分以上はかかるが、このアニメは実際には1分半程度である。