2.《ネタバレ》 どんな作品のごく僅かな登場でも、一瞬で場を引き締め、そして忘れがたい存在感を残す、名優にして名脇役の殿山泰司。その殿山さんを主人公とする伝記映画とは、またとんでもなく難易度の高いテーマに挑んだものだと思いましたが、まったく論外な内容でした。●この異形の名優を演じるには、竹中直人では荷が重すぎましたね。形態模写にすらなっていません。荻野目慶子との演技の息も合っていません。しかも年月の経過も表現されていません。●描写の対象の中心は放蕩な私生活であって、確かに本当にそうだったのかもしれないけど、その中からどうやってあの隠れた名演の数々が生まれてきたのかを描かないと、伝記映画にはならないでしょ。これだったら、ただのその辺の変てこオッサンでしかありませんよ。●セミ・ドキュメント風にしているのも全然成功してないし、なぜか主人公のナレーションが不必要に被さってくるのは、もしかするとエッセイストとしての殿山さんを表現したつもりなのかもしれないけど、それ自体が作中で描かれていないので、何の意味もありません。