1.《ネタバレ》 テンタクルズと聞くと昔からウルトラQのエピソード『南海の怒り』に登場する大蛸スダールを思い出しちゃうんです。怪獣図鑑ではスダールの解説として「酢ダコにしたら1000人前(1万人分だったかな?)になる」とあり、そもそも酢ダコ一人前とはどれくらいの量なんだろうか、そして果たして美味いんだろうか、と子供心にも疑問を持って今でも引きずっています(笑)。 底抜け超大作としてあまりに有名な本作ですけど、蛸の見せかた自体は水中撮影を使ったりして思ったよりまともです。肝心の大蛸テンタクルズですけど、こいつは怪獣と言うほどの大きさではありません。下手くそな撮り方のせいでどれくらい大きい蛸なのかイマイチ判りづらいのですが、ヨットを襲う海中からの映像を見る限りではせいぜい全長5メートルという感じで、酢ダコにしたらせいぜい100人前でしょうか。そもそも“超大作”という宣伝文句からして日本の映画会社の誇大広告で、どこにもカネをかけた痕跡が観られません。オールスター・キャストと言うのも錯覚で、スターと呼べるのはヘンリー・フォンダぐらいで、シェリー・ウィンタースとジョン・ヒューストンはちょっと違うでしょうって感じで、後はほとんどがイタリア人と観てすぐ判る俳優がアメリカ人を演じています。たぶんこの映画の製作費の3分の1ぐらいはフォンダのギャラだと思いますが、これがまた酷い手抜き演技なんです。出番自体が2シーンだけでひとりで電話してるだけ、絡むのもイタリア人俳優がひとりだけなんです。そして中盤以降は突然すがたをくらましてまるで彼の存在すらなかったかのように映画は進行してしまうんです。ヒューストンとウィンタースも同じ様にフェード・アウトしちゃうし、この監督はちゃんと最後まで映画創りに関わったんだろうかと不思議でなりません。 この映画が“底抜け”の殿堂に鎮座しているのは、蛸の特撮がチャチとかいうわけじゃなく、あまりにお粗末な脚本のおかげなんだということは理解できました。でもほとんど同時期の『オルカ』をしっかりパクっているところなんかは、さすがイタリア映画界と言うほかありませんね。でもさすがにこれを映画館でカネ払って観てしまったら、たぶん暴れたでしょうね。