1.《ネタバレ》 CS放送で鑑賞後、【かっぱ堰】さんのコメントを拝読。成功しておらずむしろ破綻している登場人物の造形、深みのない物語展開、意外性のない映像表現などなど、きわめて的確なご指摘だと感服いたしました。少なくとも、この作品を通して本来伝えたかったであろう「人生における本や図書との出会い」「地域において図書館の持つ役割」などについては、より時間をかけて丁寧に描いてほしかったと思うところです。
あまりのひどさが気になって、この映画の紹介文を見てみると、下記のとおりとなっておりました。
「図書館で働く女性が地元住民たちとの交流を通して成長していく姿を、「魔女の宅急便」「あさが来た」の小芝風花主演で描いたハートフルドラマ。葛城地域の図書館に、大学を卒業したばかりの新人女性司書が赴任してくる。初めての職場や慣れない環境に戸惑うばかりの彼女だったが、ある老婦人の探しものを手伝うために葛城地域を巡るようになり、地域の歴史や文化を再発見していく。さらに、おおらかで純朴な地元の人々との出会いを通して様々なことに気づき、人間的に成長していく」
それを踏まえてあらためて違和感が増幅してきます。
1)「初めての職場や慣れない環境に戸惑うばかりの彼女」とあるが、映画での描き方をみる限り、主人公女性はマイペースを貫いており、とまどっているのはむしろ普通に働き生活をしている図書館職員や住民のほうだと思われる。
2)「ある老婦人の探しものを手伝うために葛城地域を巡るようになり」とあるが、映画での描き方を見る限り、老婦人の探しものを手伝うどころか、本来の要望を知ろうとしないまま勝手な思い込みから邪魔をしているだけであり、主人公自身が劇中終盤になってそのことに対する反省を口にしている。
3)「地域の歴史や文化を再発見していく」とあるが、何をどう再発見しているのかが明らかになっていない。
4)「おおらかで純朴な地元の人々との出会いを通して様々なことに気づき、人間的に成長していく」とあるが、純朴な地元の人々との出会いが描かれておらず、何に気づいたのか、人間的にどう成長したのかが非常に表面的で、映画で描かれている程度のことを「気づき」「成長」と読んでよいのかどうか。
紹介文を書いた人は映画を見ずに書いたのか……と思ってしまうほど、鑑賞後に困ってしまう作品と言わざるを得ません。「地元住民たちとの交流」などといいながらも、主人公の出会う課題や抱える問題意識は狭く、ドメスティックなものとしか思えず、登場人物意外の人物の描き方や設定も薄いものにしか思えません。「しっかりとした群像劇を描けない」という日本映画に多くみられる弱点をあらためて痛感してしまいました。