1.《ネタバレ》 ギャングスターとは思い切ったタイトルをつけたものです。悪事の限りを尽くした男は、本当にスターなのでしょうか?実在したフランクルーカスという醜悪でブサイクな悪党を、ハンサムなデンゼルに演じさせて、まるで一流のビジネスマンに見せかけています。「おれの商品はブランドだから品質を低下させるな」と麻薬の代理店に、のたまう様子は、まるでスイスの高級腕時計でも売りさばいている経営者ではないかと錯覚しそうになる。また、同業者から「おまえんとこの麻薬は安すぎるから相場が崩れる」と苦情を受けても、「私どもの商品は、安いだけではなく、品質も良いので、より多くのお客様に愛用されています」と言ってのける。おまえはダイエーの中内功か。麻薬の流通コストを抑えて、みんなが安いお金で買えるようになったという論調です。ルーカスが平気で人を殺すエピソードはあるものの、基本的には、彼は経営の神様のように撮られている。そのうえ家族想いで、教会でお祈りまで捧げていやがる。アメリカ史上最高の偽善者じゃありませんか。偽善という点ではラッセル刑事も負けていない。自分のことを、正直な男だと思い込んでいるが、平気で愛する妻と子供を裏切って、情事にふける汚い男です。離婚されて子供をとられて当然です。こういうバカ男に息子を愛する資格なんてありません。それとですね、殺人・麻薬など、残虐非道の限りを尽くしたルーカスですが、他人の罪をチクッたことにより、懲役70年の刑が、たった15年でムショから出てこられる司法取引という制度もいかがなものでしょうか?しかもその後、彼はまた罪を犯して逮捕されているというありさま。実は頭が悪いのかもしれません。何よりも驚くのは、まだこの男は生きているという事実。なにゆえに悪党は、こんなにしぶとくて長生きするのでしょうか。右を見回しても左を見回しても、この世の中は偽善者ばかり。本当の正直者は、自殺したあの悪徳刑事かもしれません。