1.《ネタバレ》 一言でいうと、この風立ちぬは腹立ちぬです。まず、庵野さんの一辺倒な声。なぜ飛行機の話をしている時の声色と好きな女性に「きれいだよ」という声色が同じなのですか。今回の作品では劇中でキスシーンがある。それなら尚更女性への愛情表現にも一層熱を込めるべきではないでしょうか。
音に関してもう一つ。今回の効果音は人間の声を使用したとのこと。なぜこれまでの本物に近い音を生み出してきた技術を無下に放り出して、こんな不気味な音を流したのでしょうか。
次にヒロインの菜穂子は美しいが病弱体質で結核。ならサナトリウムにいなさい。サナトリウムを抜け出して結婚して、旦那の横にいたいからといって喫煙を許したり、うつるかもしれないのに布団を持ち上げて「来て・・」と言ったり、散歩するといって姿を消したり・・。その結果が自分が死んでいく姿を見せたくなかったなんて!この安っぽいパターンは邦画では数年前にセ○チューがやってるわけですよ。自らの奔放さに酔っているヒロインに対して「まだ生きてるんか・・はよくたばりや・・」と思ってしまいました。とても残念です。
ストーリーでは、この映画は結局何に軸をおきたかったのでしょうか。飛行機作りへの情熱?戦争に使われるという葛藤?それともラブストーリー?軸がぶれていて一体どこに腰をすえて観たらいいのかわからない。
先日のラピュタを鑑賞して、宮崎駿の「飛ぶ」ことへの執着心・羨望・憧れを改めて認識しました。サツキとメイはトトロのお腹に掴まり、キキはほうきやデッキブラシに跨がり、ラピュタという巨大都市を宇宙に浮かべ、姫様はキツネリスとメーヴェに乗り、豚にさえ「飛べない豚はただの豚だ」と言わせた宮崎駿です。
空への憧れはこれまで何度も感じ、彼の映画の主人公たちが空高く飛ぶ度にわたしも一緒に飛翔するような魅力がありました。
素晴らしい点としては松任谷由美のヒコーキ雲です。このために1800円払いに来たのかーと思うほど、映画館のサウンドで聞けてよかった。
宮崎駿はこの作品を最後に引退するのでしょうか。余計なお世話でしょうが、それくらいの意気込みを感じた番宣だったので。もう宮崎駿監督のネームバリューがあったとしても、映画館で鑑賞することはないでしょう。とはいえ今後もジブリには期待しています。
どうか、リアリティーに慣れた子供たちに、映画館では夢を観させてください。