1.《ネタバレ》 率直に言ってしまうと"映画"として面白くなかったです。多分目指した所は現代版『羅生門』だと思うのです。数々の証言に信ぴょう性は無く、真相は藪の中に隠されていると言う、そういうストーリーです。ただ『羅生門』の方は事件の真相そのものに観客が疑いを抱く様になっている優れたミステリであったのに対し、本作は誰の目から見ても証言者の勝手な想像だろうと断言できることまで無闇矢鱈に藪の中に放り込む。例えば、証言者の一人、満島栄美が色々想像する話ってのは本当に想像でしか無い訳で、そんなものを映像で見せられても無駄に尺が長くなるだけだと思います。そのある事ない事想像する大衆の怖さを描いている作品でもあるのだから全くの無駄とは思えませんが、「そんな想像見せるならサッサと次の証言者の話に移ってくれない?」と思ってしまいました。
そして非常にキツかったのがワイドショーのシーン。意図はわかるんです。憶測の情報を基に勝手にある人物を容疑者として扱うワイドショー(数年前にみ○も○たが非道い憶測をしてましたね)、またその元となるネットの問題性。でもそのワイドショーの映像をわざわざ5分以上も見せる必要があるのでしょうか?普段あまりワイドショー番組を観ないので、このシーンはとても辟易しました。映画として必要なのは分かるけど、映画として全然面白くなかったです。
あと超バリアフリーな、わかり易ーい演出方法も正直どうなんだと思います。この映画は基本的に証言者のナレーションに合わせて進んでいきますが、例えばある証言者が「その時、私は見たのです。彼女が笑っているところを!」と言った時に、容疑者が「(ニヤリ)」と笑うシーンにはこっちが笑ってしまった。そんなシーンばっかり。
文句ばっかり書いてますが、要所要所でTwitterに興じる大衆の愚かさを描いた後に、終盤近くで美姫と夕子がロウソクを点滅させてお互いに繋がっていることを再確認するシーンは素晴らしいと思いました。Twitterもロウソク遊びも他者と交信し繋がりを持つという意味では同じですからね。でもそれって多分原作(未読)にある要素だろうし、映画化作品の良さとは別でしょうが。