3.《ネタバレ》 時系列を含む話の構成・展開や、重厚な映像に見入ってしまいました。
殺陣シーンは別としても役者さんの演技も素晴らしかったです。
しかし、見終わってから作品を自分なりに咀嚼してみると、「これって結局何なんだろう?」…みたいな。
井伊家に「ハラキリ詐欺」に行った求女は、井伊家の家臣に強要されて武士の面目に縛られ、竹光での侮辱的な切腹に追い込まれます。
武士の魂とされる刀を持たず、腰に竹光を差して「切腹させて。」では、武士である井伊家の人達からすれば怒るのは当然です。井伊家ナメられています。
それを受けて義父の半四郎も井伊家に「ハラキリ直訴」に行き、「介錯人が全員居ないのは、病欠じゃなくて自分が髷を切ったから出て来れないんだ。」と、武士の体裁を利用した仕返しで家老を追い詰めます。
結局、双方とも武士の面目を盾に相手の揚げ足を取り合って意地悪しているだけです。
その結果、半四郎も家老も、家族や家臣の否を省みること無く、相手への攻撃という行動を取ります。
面目とは保つことが重要であって、その内容や正当性などは立場や境遇によって勝手な解釈が出来てしまうのではないでしょうか。
また、家老の事件隠蔽も当時の幕藩体制下での君主、面目を絶対とする武士道からすれば、現代の倫理観で単純に判断できないと思います。
恐らく半四郎は自分を含めた武士の在り方全てを否定するに至ったのでしょうが、言動、行動には一貫性や整合性は感じられません。
彼がした事は、武家業界に精通した姑息なクレーマーが犯した身勝手なテロ行為で、町人の私からすれば支配者階級の自壊的喜劇に写ってしまいました。
仮に制作サイドが武家社会への皮肉を主題にしているとしても、貧しさが原因とはいえ、浪人親子の行動が利己的すぎて作品自体のカタルシスも無くなり、私自身の気持ちの置きどころが作品の中に見つからずに、消化不良で中途半端な印象に成ってしまいました。