1.《ネタバレ》 第二次世界大戦中、ノルウェーにあったドイツの原爆製造用のための重水製造工場を破壊する実際おこなわれた作戦がモチーフになっていますが、映画では大幅に脚色されています。この作戦は戦史の中でも知名度が低く今や忘れられた様な状態ですが、そもそもナチス・ドイツが原爆開発に成功する見込みはほとんどなかったからでもあります。ヒトラーは核物理学を「ユダヤ人の科学」として忌み嫌っていて、またどうも原子爆弾というものを理解していなかったふしもあります。何とか細々と開発は続いていましたが、どうも英国はドイツが原爆開発に成功する見込みがないことに気づいていたみたいで、それでもレジスタンスに犠牲を払わせても邪魔をしようとするところなぞ、大英帝国の執念深さは大したものです。 さて本作の特長は、レジスタンスの核物理学者に扮するカーク・ダグラスのジェームス・ボンドも裸足で逃げ出す超人的な活躍に尽きるのではないでしょうか。女癖は悪いは、片っぱしからドイツ兵を殺すは、爆弾を仕掛けたフェリーに戻って女子供を救助するは、ダグラスこそは“60年代のスティーブン・セガール”であると断言しちゃいますね。邦題も正しくは『テレマークの“沈黙の要塞”』というところでしょうか。 『スパルタカス』で監督をクビにした負い目がダグラスにはあったので、アンソニー・マンに出演を頼まれてふたつ返事で引き受けたのに、出来上がってみればまるで自分のプロダクションで製作した様なヒーローものになっちゃうとは、さすが“俺さま”ダグラスの面目躍如ですね。さぞやアンソニー・マンも頭を抱えたことでしょう(笑)。