1.《ネタバレ》 昭和40年が舞台で全編モノクロだが、初めから古いものを使えばかえって映画が古びないというのが監督の考えらしい。ただしそれは前半だけのようで、後半は時間を超越した異空間のような場所で話が展開しており、さらに終盤で未来と当時の警察が協力関係にあるらしいのを見ていると、アメリカ政府が宇宙人とのコンタクトを隠蔽していたような陰謀論的超現実感まで生じるので、もう年代など関係なくなってしまう。
またこの映画では深町と和子が再会できたので、これで一応はハッピーエンドのつもりなのだろう。しかし30過ぎるまで待たされた和子が、これで本当に幸せになれるのかどうかは怪しい気がする。深町は一生逃げ回るようなことを言っていたし、和子の方にも15年の間にいろいろあっただろうと勘ぐってしまい、どうも素直に喜んでやる気になれない(すでに浅倉のものにされてしまっていて、ここで再度「助けて、連れ出して」と深町に懇願したなど)。加えてこの場面は映像的にも、登場人物が演歌の世界に移行したような中高年風味が感じられ、切ない青春物語を期待していると裏切られた気になる。こんな風にこねくり回されるくらいなら、21世紀の時かけは世代交替して正解だったと思う。
ところでヒロインは外見的にはカワイイ系の人ではなく、特に前半では高校生らしさは出ているものの全く愛嬌が感じられない。ここだけ見れば史上最も可愛げのない時かけヒロインということになるが、しかし後半になると表情が変わって俄然魅力的になり、深町と話すときの幸せそうな顔は普通に可愛らしかったし、尋問されている時の顔は毅然として美しかった。どうやらわざと差をつけていたらしい。個人的には「さよなら!」という場面がけっこう気に入っていたりする。
ほか登場人物の中で無条件に好感が持てるのは英語の先生で、演者はこのとき×十歳くらいのようだが、生徒にも美人とほめられていたのは同感である。映画を見たあと、思い出したようにアイドル時代のCDを購入してしまった。