1.《ネタバレ》 とても割り切れないものが残る作品でした。ここまでの3作、寅次郎がしでかす「バカ」は最初から思い込みが激しく破綻することが見えているような「バカ」でした。だから、周囲が迷惑し呆れても、観ている側には寅次郎の純情が伝わって来るし、時間が経てば元の鞘に収まるような「バカ」だったと思います。ハワイ旅行の一件に関して、寅次郎は「バカ」なことを一切していないと思います。普通に叔父夫婦を喜ばせたかっただけです。敢えて言うなら、旅行会社の資金持ち逃げが発覚した時の判断とその後にとらやに戻って隠れるという選択肢が少し「バカ」でしたが、それは寅次郎の「激しい思い込み」で起こったことではありません。小市民的な判断でしょう。そこに泥棒を入れて計画を破綻させるシナリオがとても残酷で、叔父の口からは「悪銭身につかず」とまで言わせてしまう。寅次郎が怒るのは当たり前でしょう。リアルに気の毒な気分になり、笑って観ていられなかったです。栗原小巻との失恋もいつものパターンに近いように見えますが、落ち込んでいる彼女を元気付ける演出や印刷工場の若者の視線から彼女を守る行為はとても常識的で、やはりいつもの「バカ」があまり見当たりません。結果として、失恋した寅次郎に周囲が気を遣い過ぎているように見えました。全体として、寅次郎をただ「笑い者」にしているだけ、という意見です。