7.《ネタバレ》 夢だから仕方ないのかも知れませんが、何とも抽象的な内容。
冒頭の「狐の嫁入りを目撃してしまった少年」の話からして、尻切れ蜻蛉に終わってしまうものだから、観ているこちらとしては落胆し、観賞意欲を削がれてしまったのですよね。
「結局、狐には許してもらえたの?」「無事に家に帰れたの?」
という疑問が頭で渦巻いている内に、もう画面では次の話が始まっていたという形。
この先、どんなに面白い話が始まったとしても、また唐突に終わるんじゃないかという懸念が尾を引いてしまい、最後まで映画の世界に入り込めなかった気がします。
そんなオムニバス八編の中で、特に印象深かったものを挙げるなら、トンネルの話と、ゴッホの話になるでしょうか。
前者に関しては「足音」の怖さを感じる一方で、青白いメイクをした部下の亡霊が姿を見せた途端「いや、これ監督も笑わせようとしてやっているよね?」と思えてしまい、そのチグハグな空気がシュールで、奇妙に面白かったです。
後者に関しては、絵の世界に入り込む演出が視覚的にも楽しいし、画面作りに拘る黒澤監督が、ゴッホの口を通して「講義」を聞かせてくれているようでもあり、興味深いものがありました。
全体の構成について考えてみると、当初は童話のような雰囲気で「本当に、こんな夢を見たのかも知れないな」と思わせるものがあったのに、後半から妙に説教臭いというか、観客に対するメッセージ性が強まった内容となっていたのが、ちょっと残念でしたね。
「本当に、こんな夢を見たの?」と懐疑的になってしまい、それこそ映画という「夢」から「現実」に引き戻されたような感覚がありました。
所々ハッとさせられる場面もあったのですが、総じて退屈に感じてしまった時間の方が長く「こんな夢なら、早く醒めて欲しいな……」と思ってしまった以上、どうやら自分の肌には合わない夢であったようです。