4.例えば、アメリカを揺るがすような大きな陰謀を阻止するために選ばれたのが、就職して1年に満たない若者ただ一人であることに、コリン・ファレルは疑問を抱かなかったのだろうか?、とか、日本の刑事ドラマなみにお粗末な尾行シーンとか、ネタがすぐばれるとか、ま、そんなことはどうでもいい。この映画で一番問題なのは、こくがないこと。例えば、なぜコリン・ファレルはCIAを志したのだろう?映画は説明する、父親について知りたいため、と。しかし、それは単に説明だ。ファレルはなぜ父親について固執するのか、大手企業を袖にしてまでCIAを志すのか。説明ではなく、納得したいのだ、私は。
つまり、すべてが性急に過ぎ、メリハリに欠け、主要な物語を語るだけで、ディティールやキャラクターの面白さがまるでない。などと書くと、「そんなこと描いてたらタルくなっちやう」と若者諸君は言うかもしれないが、例えば70年代のサスペンスストーリーはたった1カットで物語の様々を描く技量を持っていたのですよ。そんな演出が今のハリウッドにはまるでない。中年の繰り言のようで申し訳ないが、そういうことだ。お話だけの映画を観たいなら、原作小説で充分だ。私は映画が観たいのです。