1.《ネタバレ》 明らかな失敗作です。小津は日本にトーキーが持ち込まれた31年以降、トーキー移行に向けた実験を繰り返してきました。フェードイン・アウトによる安易な場面転換や移動撮影など、小津が嫌ったと「される」演出を徐々に減らしていき、満を持してのトーキーデビューが本作でした。しかし、本作には捨て去りつつあった演出が総動員されています。小津がトーキーの編集に手こずったことは確実。そんな中でトーキーに対する風刺をかます惨めなシーンもありました。小津の心境はお母ちゃんの悔し涙と奮起を誓う息子の意志にシンクロしています。その後、本作での反省を活かして小津は黄金期を迎えます。本作は避けられるものなら避けたかったが、成功のためには必要だった失敗作です。