5.いろいろ考えて作られているということは分かるし、表現が難しいとされる10mという中途半端なサイズのクリーチャーを登場させた試みや、従前は重きを置いてこられなかった空中戦を見せ場の中心に置いたことなど、作り手の意欲は感じられました。また、そもそもが実写作品だけあって作劇のノウハウも積み上げられているため、例えば『デビルマン』や『北京原人』のような豪快な破綻はなく(これらの作品と比較されている時点で、なんとも・・・)、それなりにまとめられているのですが、それでもやろうとしていることに対して予算も人材も追い付いていないことが全編を通して伝わってくるため、見ていてとても辛かったです。客をもてなそうという心意気は痛いほど伝わってくるし、見ているこちらもその思いを受け取って良い部分を探してあげたくなるものの、特筆すべき点がまるでないのです。
大人向けの作品にしたはいいが、大人を納得させるだけの演技や演出を準備できなかった。これが本作最大の失敗だったと思います。なんせ、主演が別所哲也と大澄賢哉ですからね。ヘタとは言わないものの演技力に定評がある人達ではないし、泣く子も黙らせるような強烈な華もありません。また、この手の作品では大御所俳優が脇役として控えていて作品全体を引き締めるものですが、本作でその立場を担っているのが草刈正雄。これまた、作品を引き締めるほどの力はありませんでした。日本一のヒーローという大看板に、俳優たちが完全に押し潰されているのです。
見せ場についても、自衛隊の実機を登場させる場面ではオッと思わせるものの、その後にめちゃくちゃチープなセットが出てきたりするものだから、予算の少なさが余計に際立ってしまっています。低予算で無理をして作ったことがそこかしこに現れており、そこにヒーローのロマンなどはビタ一文ありませんでした。