6.《ネタバレ》 難解だとかじゃなくて、観終わって本当に何も感じるものはなかったです。
多分、創作意欲とかは恐らく全然ないままでこの映画を作ったんじゃないかな?
まず、視点が定まらない感じがするのですが、ラスト3カットで主人公がベッドに入ると夢だか回顧だかのシーンに移行していますが、もしあれが幼い頃の夢だとすれば、あのような第三者的な位置からの映像は不自然なわけで、序盤に出てきたみたいに少年の目線で映すことによって描くべきだと思いますし、また、送られてきたビデオを再生する時の映像も、オープニングはいいとしても、物語の途中で再生する時はビデオを見ているシーンだと分からせるために画面を粗く処理するとかして物語を進めた方がいいのではという気がします。ラストの長回しも、何かしら強調したい部分があって、それを見てもらおうとする意思があるとすればもうちょっと分かるように撮る筈だから、たぶんあのラストショットでは特に注目して欲しい部分などはなく、何の意図も込めずに撮ったのでしょう。
脚本についてもよく練られていないような印象で、初めて昔の同居人を訪ねて部屋に入った時「よくここが分かったな」と言われれば、ビデオの送り主は彼ではない事が明らかになる筈であるにも拘わらず、それを無視してやり取りが続けられているのは勿論、あれっ?という素振りすらしない。最後の方のトイレの中での相手の息子との会話も、大声で呼び出しておきながらも何が言いたいのかハッキリしないし、奥さんを心配させまいとついていた嘘も疑問符がつくような内容。
他にも、本筋とは無関係なシーンが無駄に多いのもダメ。奥さんが夫婦愛を強調するような事を訴えていたにも拘らず他の男に寄り添って涙を見せたりするシーンとか、最初の方で自転車に接触しそうになるシーンに至っては、パーティーの時の作り話の伏線のためだけに挿入されたとしか思えないワンシーンで、サブプロットにも成り得ていない部分に更に無駄を付け加えるという実に馬鹿げたストーリー構成。
自殺のシーンを見たお陰で、息子とエレベーターに乗るシーンが凄く緊張感が出ていて、しかもそれが何の変哲もない撮り方だったのがかえって緊張感を増すように作用していた、と本来ならばそう書くところですが、何も考えずにこんな映画を作った人のことだから、気がついたら緊張感溢れちゃってました(笑)、みたいな事かもしれないですね。