1.戦争を描いた映画や小説の評において、「戦争の狂気」なんて言葉は、もはや常套句で、自分自身も何度も使ってきたように思う。
だが、実際問題、自分を含め多くの人々は、その言葉の意味をどれほど理解出来ているのだろうか。甚だ疑問だ。
「パレスチナ問題」は、ほとんどすべての日本人にとって、“対岸の火事”である。
重要なことは、先ずその自分たちの認識の低さを認めることだと思う。知ったかぶりでは、何も生まれない。
そういう「無知」な状態で観た映画であり、そうである以上、その視点からの映画の感想を述べるべきだと思った。
感じたことは、あの遠い国で繰り広げられ、今尚くすぶり続ける戦争において、人々の心を蝕むものは、もはや「狂気」などではないように感じた。
長い歴史の中で、繰り返される憎しみの螺旋、それを断ち切れない人間そのものの「業」だと思う。
だから、敢えて言わせてもらうならば、映画の主人公が抱えていた”心の傷”に対して、今更何を言ってるんだというような不自然さを拭えなかった。
問題は今この瞬間も決して解決していなくて、血を血で洗っている。そんな中で、この映画の表現は、本質的に非常に浅いように感じてならない。
特徴的なアニメーションは、映像表現としては素晴らしかったと思う。
ただし、最終的に「実状」を現実的な映像で見せてしまうのは、メッセージ性は別として、表現方法としてフェアではないと思った。