3.《ネタバレ》 この映画を表すと「面白くない理不尽」
ソウやエス、キューブなどの似たような映画は理不尽であっても面白い。
なぜなら、それらには観客を納得させる要素が含まれているからだ。
ソウならば黒幕の動機、エスならば実体験とリンクさせられる説得力、キューブなどは理不尽さそのものが映画の根幹をなす。
しかし、この映画は観察者が最初から出ずっぱりで、ご親切なことに同情までしてくれる。
はっきりとした目的こそ明かさないものの、国家が関わっていることも、仕掛けを発動させるタイミングも、観客に教えてくれる。
何せ、被験者たちが取る行動まで細かく教えてくれるのだ。
「(音を出して)刺激を与える」とか「ヒントに気づいた」とか。
なにせ通気口から逃げ出せるかも、と被験者が視線を飛ばした瞬間「逃走路発見」と来る。
これでは被験者側に感情移入など出来ようはずもない。
では、観察者側はというと。
まず苛々するのが、女博士のフラッシュバックと妄想。
何回もするほどのことだろうか。
次に伏線の張り方。
9.11をそんな早くから匂わせたら興ざめというものだ。
質問文が堅い文面で外国人を思わせる、というのも、女博士に説明させたら駄目だ。
せっかくイスラムっぽい話し声が聞こえるという仕掛けがあるのだから、被験者が質問文と併せて、アルカイダに拉致されたと推理させるべきではないか。
そして、ラスト近くで実験の目的が明らかにされるのだが、幾つか首をかしげるところがある。
まず、実験であるのにいつのまにか育成になっている。
作中で実験とされているものははどちらかというと育成、もしくは判別プログラムである。
次に、黒幕の男が生存者に対して放った一言である。
どう考えても軽率極まりない行動、言葉であろう。
なにせ、実験(と称するもの)はまだ終わっていないのだから。
そして、最後にあの被験者が黒幕の望む人間になれるのかということ。
むしろ誰も傷つけたくないと自殺してしまうような気がするのだが。
というか私なら9.11の遺族をそういう存在に仕立て上げる。
こっちのほうがより効率よく、かつ間違いがないような気がする。
倫理的には大いに問題があるが、いまさらな話である。
そもそも、アルカイダ側のそれは、そういう人達が多いのではないだろうか。
アルカイダがKR計画を実行しているとは思えないし。