1.《ネタバレ》 スターといっても過去の人達が顔を揃えたVシネなので大して期待はしていなかったのですが、その下がりまくったハードルも越えられないほどの無残な出来でした。
主人公が極端な行動をとらざるをえなくなる理由づけが物凄く弱いので、序盤から躓いています。例えば1993年の『逃亡者』では、「俺は無実だ」の主張に対して「知ったことか」と返すジェラード捜査官の一言により、これは逃げる他ないということが主人公と観客との間の共通認識として成立していました。他方、本作はあのような端的なやりとりがないまま本編を始めてしまうので、頭には疑問符しか浮かびませんでした。
そもそも、世界最高クラスの殺し屋に命を狙われており、しかも目の前で同僚や上司を殺され「敵は本気だ」ということが明白な状況で、自力で事に当たる奴なんています?第一容疑者に上がっており自分にとっては不利なシチュエーションかもしれないが、それでも殺されるくらいだったら警察に駆け込み、少なくとも口封じはされない環境下で身の潔白を証明するという行動がもっとも合理的だと思うのですが。
その後、度重なる殺し屋の追撃を交わし、国際指名手配犯であるにも関わらず国際線で移動してついに母国まで帰ってくる主人公。あまりに無茶な展開が多いので、実はCIAという設定でもあるのだろうかと思っていたのですが、ただの事務系職員のまま通すので悪い意味で驚かされました。さすがに無理ありすぎでしょ。
NYに着いたら着いたで、さっさと捜査機関に駆け込んでテロの警告をすればいいものを、またしても一人で事に当たろうとする主人公。もはやバカにしか見えませんでした。プロフェッショナルであり、しかも複数人である敵側が、そんな主人公相手に敗退するという展開にも何らカタルシスが宿っておらず、短い上映時間をごまかせるほどの内容もない作品でした。