3.《ネタバレ》 個人的にはちょっとここの評価は高すぎる気がする。
実にジャッキーらしい身体を張ったアクション映画ではあるが、今どき「何も不自由の無い生活をしているはずの若者がゲーム感覚で強盗や殺人をしている」というプロットがあまりにも陳腐だし、そこから社会批判に繋げるというのは紋切り型すぎる。何より、そういう重いテーマ性とジャッキーの娯楽色の強いアクションは基本的に相性が悪い。また、そのアクション演出もさすがにマンネリ気味で、ほとんど自己パロディの域。肝心の登場人物の背景描写もステレオタイプなので感情移入も出来ない。
最初の制圧に失敗した後のジャッキーの落ちぶれっぷりは、ほとんどコントにしか見えなかった(酒瓶を片手に目は虚ろで繁華街を彷徨いながら、「オレなんかどうなってもいいんだ」的な空虚感を漂わせ、チンピラにボコられる)。まさに「落ちぶれ表現」の記号に満ちた黄金パターン(笑)。
いつものアクションも年齢の割りにはキレがあって頑張ってるのは分かるけど、はっきり言ってワンパターンで、もはや新鮮味は皆無。また、型通りの動きを再現しているカンフーは、ふたりの動きに整合が取れていない時があり、不自然に見えるシーンが多かった(相手の蹴りよりも若干早めにジャンプで避ける動作に入っていたりetc.)。
そして既述したように、リアリティとは対極にあるような、ハデに見せる事が目的化しているジャッキーアクションは、ともすればふざけているようにも見えてしまい、シリアスな内容とのギャップが生じている。
途中の二階建てバスが街中を暴走するシーンなども迫力はあるが、客が乗っている以上、ギリギリで止まる事が分かり切っている「お約束」に裏打ちされた旧来型のカースタントでしかなく、掛けた手間や金ほどには効果を上げていない。そう言う意味での工夫や意外性が無い。
婚約者に仕掛けられた時限爆弾が爆発するシーンもしつこい。あそこは「無事解除できて良かったね」で良いじゃん。ドンデン返し的な演出のつもりかも知れないが、それまでにも散々人が死んでるんだから、ラスト近くまで来て、わざわざ女性の顔にまで火傷を残すような悲劇性を上乗せする必要は無い。そんな事に時間を掛けるくらいなら、各キャラの人物描写や謎解きなど、もっと丁寧に描くべき要素が他にいくらでもあるはず。