3.《ネタバレ》 半世紀も前の作品という事を考慮すれば、それなりに完成されているとは思うけど、さすがに古さは否めない。ミステリーとしてもサスペンスとしても、実に基本的と言うか、オーソドックス過ぎて、今見るにはかなり物足りない脚本。やはりミステリーやサスペンスといったジャンルはアイデアに支えられている部分が大きいので、ごく一部の例外を除き、どうしても古典よりは、色々な過去のアイデアの改案と取捨選択などを経て作られた新しい作品の方がよりインパクトがあるし、面白いと言わざるを得ない。
まず、妻を尾行させるのに、しかるべき調査機関に依頼しないで、執拗なまでに友人に頼むという導入からしていかにも不自然で、「何かの形で利用されるんじゃないの?」と読めてしまう。そして事実その通りの展開であり、読めてしまった地点で今作の謎の大半は意味を失ってしまう。最近のミステリーなら、そう思わせておいてラストまでに二転三転させるところだろう。どんでん返しがあれば良いと言う訳でもないが、謎の魅力と意外性で引っ張っていくジャンルである以上、あまりストレート過ぎる展開は大きなマイナスポイント。
また、中途半端に恋愛ドラマを挿んだりと、全体的にどっちつかずな印象。ミステリーならミステリーとして無駄な要素は排して、純粋に謎解きの醍醐味とサスペンスを楽しみたい。これまた不遜な事を言わせてもらえば、この作品もヒッチコックの古典として少し過剰評価され過ぎていると言わざるを得ない。