1.《ネタバレ》 寺島しのぶさんの鬼気迫る演技は圧巻です。しかし、脚本がそれに追いついていない印象を受けました。
反戦映画として、戦争の悲惨さを訴えるねらいはよくわかるのですが、歪んだ夫婦の物語を無理矢理反戦というテーマに繋げたようにしか感じられませんでした。
この映画では戦争に行く前の夫婦の生活がほとんど描かれていません。「戦争によって幸せを引き裂かれた夫婦」を描きたいのであれば、四肢をもがれる前の生活描写は必須だと思います。さらに劇中で夫が以前から暴力を振るっていたことがわかるので反戦のテーマよりも夫の人間性に対しての嫌悪感ばかりつのります。性描写を執拗に何度も描くよりも、心理描写を大事にして夫婦に感情移入できる余地があればより良い映画になったと思うのですが・・・
元ちとせが歌う「死んだ女の子」は反戦を訴える楽曲として素晴らしいのですが、歌詞を画面に見せるわりには、映画の内容にあっていないと思います。せめて歌詞の「女の子」にあたる少女を劇中に登場させても良かったのでは。
役者の演技を期待する方以外にはあまりおすすめできない内容だと感じます。「嫌悪感」以外にもっと描くべきものはあったはずです。