1.《ネタバレ》 分かりませんでした。「作品の意図」とか「作者の言いたいこと」とか以前の問題として、そもそも話の展開が分からない。なぜ通り魔になったのか、という大事なポイントのとこで、思わせぶりな映像になってしまい、分からせようとしていない。全体としても無意味なアップや、なに映ってんだか分からないカットが多すぎ。最初の殺人はどうも嫉妬ゆえらしいんだけど、そこから殺人鬼にジャンプしたのは、女学生との問題だけなのか。階段の手前で進行を阻まれる電動車椅子のシーンはあり、それが階段の下で酔っ払いを待ち伏せる行為につながっていたのか、よく分からない。からかわれたり馬鹿にされたりするような、分かりやすい動機がないのはいい。でも彼の動機を納得させるだけの「彼の心の気分」は、せめて欲しい。それには電動車椅子から見た世界がどういうものかを、もっと描くべきだったのではないか。介助されることの苛立ち、よってたかって親切にされることの鬱陶しさを、車椅子の高さから見せるべきだったのではないか。介護されるほど募る孤独を描写で見せるべきだったのではないか。たぶんこの作品は、主人公を本物の身障者が演じているということに寄り掛かり過ぎている。でも私たちはそのことを、マスコミの情報なりレンタルDVDのパッケージなり、フィルムの外の回路を通じて知って観ているわけで、健常者の俳優が演じていると思って観てもいいわけだ。そう観てもこの作品は自立できるだろうか。たしかにドラマで障害者がいつもかわいそうな善人の役になるのは差別の一種だろうが、だからといって現実に実行できそうもない通り魔をやらせるのも、障害者が持つ夢や希望に対する侮りが感じられてしまうのだ。