1.《ネタバレ》 地方の小さな工場で整備士として働く冴えない青年、ジェリー。独り身で古いアパートに独り暮らしをしている彼には、ある秘密があった。それは過去に起こった悲惨な出来事のせいで、精神科医が処方してくれた薬を呑まないとある〝声〟が聞こえてきてしまうこと。だが、長く続く孤独な生活に耐えられなくなった彼は、いつしか薬を呑むのを止めてしまうのだった――。その日を境に何故か突然しゃべり始めたペットの犬や猫とともに、それなりに楽しい生活を過ごしていたジェリー。やがて彼は、自らが想いを寄せる同僚の女性をひょんなことから殺してしまい、その死体をアパートへと持ち帰って来る。追い詰められた彼は死体をバラバラに解体して捨てると、残った生首だけを冷蔵庫へと仕舞いこむ。しばらくすると、冷蔵庫の中から死んだはずの彼女の生首がジェリーに話し掛けてくるのだった。そうして始まった、一人と二匹と一首の奇妙な共同生活。やがて、ひまを持て余した生首が友達が欲しいと言いはじめ……。キケンな妄想に囚われたある一人のシリアルキラーのおかしな生活をコメディタッチで綴ったサイコ・サスペンス。主演を務めるのは、今を時めく人気若手俳優、ライアン・レイノルズやアナ・ケンドリック。まあやりたいことは分かるんですけど、僕は最後までさっぱり嵌まれませんでした、これ。いや、アイデアは凄く良いと思うんですよ。自分にだけ話し掛けてくる犬や猫、そして自分が殺した女の生首と暮らす主人公なんてなんともブラックでシニカル。そんなぶっ飛びまくりの設定なのに、残酷さを微塵も感じさせないのはこの監督のポップでラディカルなセンスのなせる技なのでしょう。ただ敢えて苦言を呈してもらうと、そこで描かれるエピソードの数々がなんとも凡庸なのです。こういう荒唐無稽な設定なら、それを活かすためのさらにぶっ飛んだネタの数々を用意しないとダメでしょう。犬や猫もただ喋ってるだけでなんとも魅力に乏しい。こいつらと生首が言い争いやらどんちゃん騒ぎやらで主人公が追い詰められ、どんどん暴走しちゃうみたいな内容を期待していた自分としてはなんとも肩透かし。これでは、コメデイとしてもサイコ・スリラーとしても中途半端と言わざるを得ません。