2.《ネタバレ》 『刑事コロンボ』シリーズは基本的に90分枠なのですが、第2シーズンから120分ものも放送することになり(広告収入が上がるらしい)、そのテストケースとして本作には90分版と120分版の両方が存在します。今回両方を見比べることができたのですが、登録されているのは120分版の方なので、そちらをレビューします。
改めて見てみると、音楽関係がムチャクチャですね。ジョン・カサヴェテスの指揮のひどさは言うまでもないです。あれで演奏できるとは、さすがプロ。それとも、音はあとで入れたのでしょうか。しかしそれだけでなく、ベートーヴェンの「田園」を楽章の途中から(カメラを回して)演奏するとか、管弦楽曲のあとに弦楽器だけの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」を演奏するとか(しかもコンサートの最後の曲らしい)、およそ常識的にはありえません。ありえないといえば、コンサートが夜から始まる場合、普通は午後にリハーサルを行い、出演者はそのまま楽屋で待機するものです。車で行かなければならないような自宅に戻るというのも考えられません。本作のスタッフは、クラシック音楽に関しては全くの素人のようです。
また、証拠品であるはずの“遺書”の上から改めてタイプするというのも考えられない。ここまで来ると開いた口がふさがりません。私は映画やドラマに完全な整合性を求めるわけでありませんし、むしろ傑作と呼ばれる作品には、なにがしか常識を超越したところがあると思っているのですが、これはあまりにもひどすぎると思います。
しかし本作を必要以上に持ち上げている人もいるようですが、それは単にゲストがジョン・カサヴェテスだからでしょう。「構想の死角」と似たようなパターンです。たしかにカサヴェテスは悪くないと思いますが、それだけで高く評価できるわけではありません。
とにかくこれは脱力系というか、失笑ものの話でした。