7.《ネタバレ》 ヴァン・サン・カッセルとモニカ・ベルッチという大物スターが首をそろえていても、そこはそれ、ハリウッド映画とは全然違うテイストになるわけだ。
ヒーローを作らせないようにすること、観客にどの登場人物にも感情移入させないこと、という部分で作りが徹底しているなあと思う。
クールなスパイジョルジュはかっこいいといえなくもないが、ヴァン・サン・カッセルは単なるハリウッドのハンサム・ボーイとは全く違うし、セックスアピールがあるには違いないだろうが女性にサービスする方向のセクシーではなく、CIAに雇われた女殺し屋を独断で暗殺してしまうあたり、クリーンなヒーロー像とはほど遠いのだった。そして、ジョルジュの人と成りをあらわすようなエピソードは全く説明されず。つまり、女性の観客も男性の観客も、シンパシーを覚えにくい。
モニカ・ベルッチは出番が少ないし、アトラクティブで女性の反感を買うタイプのうえ、刑務所内での暗殺も結局は引き受けるなどとてもじゃないが共感を誘わない。
この作品には、「観客の目」の代わりを務めるものが無いのだな。はじめからジョルジュとリサに対する共感を期待しないのなら、大佐とかほかのスパイのモノローグの形で進めたらよかったのでは。余計なお世話だが。
味わいとしてはたとえば衛星チャンネルで垂れ流されている「実話陰謀もの」の類とあんまり変わらないような気がしてくる。おもしろくはない。