2.《ネタバレ》 「箱庭的な世界観+いかにも芝居っぽい演技」というのは、ジャンルによっては功を奏することがある。この『暗黒女子』も、そこをわかってこういう作りなのだろう。でも、ひとつ大事なことを忘れてしまっている。「耽美的な世界観を作るためには、ビジュアル的なキャスティングが完璧でなければならない」ということを。
学園の誰もが憧れる完璧なお嬢様・白石いつみ。ミステリアスな死を遂げた彼女を演じた飯豊まりえは、もちろん一般レベルで言えばかわいい部類なのだろうが、銀幕でアップにしたときに鑑賞に堪える美人とは到底言えない。口元が気になる感じが強調され、作品への没入感を見事なまでに削いでくる(花壇に倒れている画ひとつとっても、ソフトフォーカスで神々しく見せようとすればするほどギャグに見えてくるし、終盤で明らかになる性に奔放な一面は非常に安っぽい)。
では、「見た目よりも中身だよね」と言えるほどのミステリーがあるか……というとそうでもなく、最初から怪しいポジションの人物が黒幕というシンプルな構成。それも、現実的に考えたらツッコミどころ満載の筋運び。「ミステリーを楽しみたい」という欲求も「耽美的な世界観を楽しみたい」という欲求も満たしてくれない、毒にも薬にもならない作品という感じだった。