2.事件が起きるまでのあれこれがかったるいんだけど、このかったるいあれこれが後の展開に作用する伏線だったりするのだろうと少しドキドキして見た。日本の武士にとうてい見えない顔立ちの金城武とまだ宝塚の非日常オーラを纏う天海祐希の、背景から魅力的に浮いた二人がこのドキドキ感をいっそう高めてくれる。振り返ればこのかったるい時間帯が一番映画を楽しめた。最も楽しめるところだと勝手に予想していた、いわゆる三者の言い分が食い違う事件のミステリアスな様相となるはずの部分がまずもってミステリアスじゃない。さらにそこに描かれる人間の業といったものなんかにはほとんど触れてこない。どうやら、真実には悲しい過去が秘められていた!などというテレビのサスペンスドラマのようなノリを楽しむもののようだ。原作とか黒澤の『羅生門』とか頭から払いのけて見たほうが良いが、実際それは不可能に近く、だからこそ作り手たちはこんな陳腐なドラマに改変したものを高尚なフリして見せるしかなかったのだろうか。痛々しい。