1.《ネタバレ》 TV報道を扱った映画である。劇中TV局はマイアミに拠点を置き、広くラテンアメリカを放送エリアにしたスペイン語放送ということらしい。
内容的には一応見たがだから何ですかという感じで、こういうことは実際あるだろうとは思うが、特に感慨深いものはなく面白味もない。原題/英題のCrónicas / Chroniclesは、普通にいえば年代記の意味だろうから意図が不明瞭だが、例えばこういう報道の連なりがやがて歴史になってしまうのはまずいと言いたいということか。また邦題は、普通はタブロイド版の印刷物のことだろうから看板に偽りのある印象だが、これは例えば劇中放送局の報道姿勢を表現するために、日本でいえば大衆紙のイメージの方がふさわしいという意味か。別に日本のTVが高級というわけでもないだろうが。
ところで日本語の解説文を読むと、1991年の湾岸戦争に関連して「当時テレビ局が流したニュースの中にはPR会社によって巧みに演出された映像が挿入されていた」などということが書いてある。またそれとは別に、1992-95年のボスニア紛争の関連でも「戦争広告代理店」という言葉が出ていた記憶があり、そういうことまで考えていいのであれば今日的な意義も当然ある映画ということになる(実際さんざん騙されている)。しかし邦題はまるでゴシップ紙の話であるかのように矮小化した形になっており、また実際見た印象としてもそれほどスケールの大きい問題提起にはなっていない。何にせよ20年近く前の映画なのでオールドメディア限定の世界ではある。
ところで製作国としてはメキシコの名前も出ているが、映画で見えているのは南米エクアドルのババオヨ市(Babahoyo)という設定になっている。実際そこで撮った映像も多かったのだろうが、他もエクアドル国内での撮影だったようである。
風景として特徴的だったのは高床式の家と、そこへ通じる高架の木橋が多く見えていたことで、これは実際にババオヨ市街地の南にある湿地だか沼だかに面した場所で見られるもののようだった。貧しい人々の住居という意味なのか不明だが、そんな家々にもちゃんとTVアンテナらしいものが立っていたのはこの映画のテーマにも結び付く風景だったのかも知れない。
そのほか夕方の街に多数の鳥が飛来(就塒前集合)していたのは、日本ならカラスとかムクドリだろうがエクアドルのこれは何だったのか。映画のテーマと関係ないようだが映像的にあえて目を引くよう取り上げられていた。