4.《ネタバレ》 知っている限りで、デヴィッド・フィンチャー唯一の凡作。
何がつまらんと言って、とにかくストーリーがつまらん。あそこまでストーリーがだめだと、演出がどうのこうのという問題ではない。逆にあの脚本でおもしろい映画を作る人間がいたらびっくりするわ。脚本も当然、監督の責任範囲内であろう。
連続殺人があり、それを追う刑事。素人(新聞社つきの漫画家)。いくつかのミステリアスなヒント。ありふれたパターンである。まあ、ありふれている事は別にいい。それが映画の良し悪しを決定するわけではない。
観客に何を見せたいのか、はっきりしない。犯人と刑事・市民との対決を描くサスペンスではない。犯人は少し現れてその後消え去るので、凶悪な犯人の姿は像は浮かび上がってこない。
謎解きを楽しむミステリーでもない。事件の状況と被害者の人間関係の全容が明らかにされていないので、新事実が明らかになっても「なるほどそうだったのか」という驚きがない。
実際にあった事件をもとにしているらしい。だから事実とあまりかけ離れるわけにいかず、劇的な展開にできなかった、ということは考えられる。しかしそれなら、なぜこの事件をわざわざとりあげたか、という話になるわけで。実話だからおもしろくなくても良い、などという理屈は興行としての映画には無い。
これらの要因は、この文章を書くために後で考えた。実際に映画を見ている時は、小難しいことを考えるまでもない。とにかく退屈だ。2時間40分ぐらいはあっただろうか。長ったらしい映画である。
フィンチャーが今後おもしろい映画を撮り続けたら、『ZODIAC』は彼のキャリア中の汚点と呼ばれることになるだろう。僕としては、ぜひそうなってほしいと思っている。